スイスの美術史家・文化史家。1818年バーゼルに生まれる。
美術史が美術家の歴史ではなく、美術そのものの変遷を考察するものであるべきだと主張した。
主著『イタリア・ルネサンスの文化』など。
ヤーコプ・ブルクハルトブルクハルト |
[ヤーコプ・ブルクハルト 人物情報]
Wikipediaの人物情報
ヤーコプ・ブルクハルト(Jacob Burckhardt, 1818年5月25日 - 1897年8月8日)は、スイスの歴史家、文化史家。
生涯
バーゼルにある大教会の説教師の子として生まれる。はじめに神学を学ぶが後に歴史学に転じ、1840年からベルリンに滞在し、レオポルト・フォン・ランケ、ヨハン・グスタフ・ドロイゼン、ヤーコプ・グリムなどの大家に学ぶ。美術史家クーゲラーの講義を聴いて深く啓発され、彼とは生涯にわたる親交を結んだ。1843年末にバーゼルで大学教授資格試験に通り、講師として歴史・美術史の講義を行い、かたわら「バーゼル新聞」の政治欄の記事を担当している。1846年に教職をなげうって「人間となるため」ローマへ行き、その間クーゲラーが編集する『芸術史綱要』と『絵画史綱要』の仕事を委嘱されて一年ほどベルリンに滞在している。1848年春には、バーゼル大学からの員外教授としての招聘に応じた。
1869年から1879年までバーゼル大学で古典文献学を担当していた哲学者・フリードリヒ・ニーチェとは親交が深かった。ニーチェの注意を世界史に向けさせたのはブルクハルトであり、ニーチェは他への書簡でも「この隠者のように人と離れて生活している思想家」について尊敬の念をあらわし、ブルクハルトの友情に感謝している。
1872年にフンボルト大学ベルリンからランケの後任として招かれるが、この名誉ある申し出は丁重に断っている。「生粋のバーゼル人として」故郷に骨を埋めるつもりだったからである。晩年の三十年は「印税のために書かされたり、出版屋の下僕となって生きる」ことを嫌い、著作活動をやめ、教育活動に専念している。1893年に公務を完全に退き、その四年後に心臓病で亡くなった。Bene vixit,qui latuit(うまく隠れて生きた者こそ、よく生きた者だ)が、ブルクハルトのモットーだったという。
方法
1842年に彼は「私にとって背景が主要な関心事である。そしてそれは文明史によって与えられる。私はそれに身を捧げようと思う」と書いている。「直観から出発することができない場合、私はなにもしない」とも。ブルクハルトの場合、直観は概念より優先されるし、歴史事象そのものよりも時代の雰囲気に関心を持つ。彼の情熱は芸術と学問の歴史、「選ばれたもの」「偉大なもの」に向けられていた。
卑俗なもの、打算を軽蔑していたので、統治の技術や制度にも興味を持たなかった。ブルクハルトはゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲルを嫌悪し、歴史哲学には関心がなく、体系を造る者ではなく、あまりにも個性的であったので学派も形成しない。後にイギリスの歴史家ジョージ・ピーボディ・グーチは「一時代や一国民の心理を解釈しようと志した歴史家にして、彼の泉から深く飲まなかった歴史家があろうか」と述べている。
なお現行のスイス・フラン紙幣の最高額面1000フラン紙幣には、ブルクハルトの肖像が用いられている。
著作
- 『ベルギー諸都市の芸術作品』 1842年
- 『ケルン大司教コンラート・フォン・ホーホシュターデン』 1843年
- 『コンスタンティヌス1世の時代 Die Zeit Constantins des Grossen』 1853年 新井靖一訳 (筑摩書房、2003年)
- 『チチェローネ イタリアの美術品鑑賞の手引き Der Cicerone』 1855年 瀧内槙雄訳 (中央公論美術出版、〈建築篇〉 2004年/〈絵画篇〉 2011年/〈彫刻篇〉 刊行予定)、各.大著 高木昌史編訳「美のチチェローネ」(青土社、2005年)-絵画篇の抜粋訳 (嘉門安雄訳、筑摩書房-古代篇のみの抄訳、戦後間もない出版・絶版)
- 『イタリア・ルネサンスの文化 Die Kultur der Renaissance in Italien, ein Versuch』 1860年 柴田治三郎訳 (中公文庫 上下、新版中公クラシックスⅠ・Ⅱ) 元版「世界の名著 ブルクハルト」 中央公論社、初版1967年 新井靖一訳 (筑摩書房、2007年)。
- 『古代ギリシア史 Griechische Kulturgeschichte』 1897年新井靖一訳 (筑摩書房 全5巻、ちくま学芸文庫 全8巻) 新関良三訳 「ギリシャ文化史」(東京堂出版 全6巻、改訂版、抄訳・絶版)
- 『ブルクハルト文化史講演集 Gesamutausgabe,Vortröge』 1929-34年新井靖一訳 (筑摩書房、2000年)
- 『ルーベンスの回想 Erinnerungen aus Rubens』 1898年 浅井真男訳 (二見書房/角川書店で再刊、各絶版)
- 『イタリア芸術史への寄与』 1898年
- 『世界史的諸考察 Weltgeschichtliche Betrachtungen』 1905年 藤田健冶訳 (岩波文庫、1972年/改訳版.二玄社、同オンデマンド版) (樺俊雄訳 筑摩書房/改訂版.潮出版社:潮文庫、各絶版) 新井靖一訳 「世界史的考察」 (ちくま学芸文庫、2009年)
伝記研究
- 下村寅太郎 『ブルクハルトの世界』 (岩波書店、新版「著作集 第9巻」、みすず書房)
- 仲手川良雄 『ブルクハルト史学と現代』 (創文社)
- カール・レーヴィット 『ブルクハルト-歴史の中に立つ人間』 西尾幹二・瀧内槙雄訳 (ちくま学芸文庫、初版.TBSブリタニカ)
- 『ヤーコプ・ブルクハルト-歴史のなかの人間』 市場芳夫訳 (みすず書房)-上記の別訳版(前半部のみ)
- 西村貞二 『ブルクハルト 人と思想』 (清水書院、新書<Century books97>)
- 野田宣雄 『歴史をいかに学ぶか-ブルクハルトを現代に読む』 (PHP新書100)
- フリードリヒ・マイネッケ 『ランケとブルクハルト』 中山治一・岸田達也訳 (創文社)
- ヴェルナー・ケーギ 『ブルクハルトとヨーロッパ像』 坂井直芳訳 (みすず書房)
- ケーギ 『世界年代記』 坂井直芳訳、同上、※第3章「ランケとブルクハルト」
- ケーギ 『小国家の理念 歴史的省察』 坂井直芳訳 (中央公論社)
- 坂井直芳 『ブルクハルトとケーギ』 <リキエスタ>の会、解説の小冊子 ※ケーギ<Werner Kaegi 1901-79>は、「全集」編者でバーゼル大学教授。大部の「ブルクハルト伝」(全7巻、没後完結)を著す。晩年(1977年)エラスムス賞<Erasmus Prize>を受賞。訳書は他に『ミシュレとグリム』(西澤龍生訳、論創社)がある。
論考(一部所収)
※「ブルクハルト」論考の章を収録。- フリードリヒ・マイネッケ 『歴史主義の成立 (下)』 菊盛英夫/麻生建訳、筑摩書房〈筑摩叢書〉
- ハインリヒ・ヴェルフリン 『美術史論考-既刊と未刊』 中村二柄訳、三和書房
- ピーター・ゲイ 『歴史の文体 Style in History』 鈴木利章訳、ミネルヴァ書房 第4章「ブルクハルト 真理を宣べる詩人」がある。
- ウード・クルターマン 『美術史学の歴史』 勝国興、高阪一治訳 中央公論美術出版、1996年
- エルンスト・カッシーラー 『認識問題4.ヘーゲルの死から現代まで』 (山本義隆・村岡晋一訳、みすず書房、1996年) 第三部・第五章に、「政治史と文化史 ヤーコプ・ブルクハルト」がある。
- 西村貞二 『歴史学の遠近』 東北大学出版会、1997年 「ブルクハルト書簡集完結」、「ブルクハルトとホイジンガ」ほかの短編論考。
- 角田幸彦 『キケロにおけるヒュ-マニズムの哲学』 文化書房博文社、2008年 第5章「<歴史哲学者>ブルクハルトの十九世紀ヨーロッパ論」がある。
- 西部邁 『思想の英雄たち 保守の源流をたずねて』 文藝春秋、1996年 第6章「進歩への悲観―ヤーコブ・ブルクハルト」がある。
- 森本哲郎 『思想の冒険者たち』 文藝春秋、1982年 「歴史の巡礼者 ヤーコブ・ブルクハルト」がある。
外部リンク
- Honya Club.comより - 悪漢と密偵... ブックス・プラス 『主婦に捧げる犯罪書下ろしミステリ傑作選』 クリスティ・マシューズ/田口俊樹 \945 3/9 ■■:ちくま学芸文庫 『ルーベンス回想』 ヤーコプ・ブルクハルト/新井靖一 \1575 3/7 ■■:ちくま学芸文庫 『イメージの歴史』 若桑みどり ...
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