オランダ出身のスイスの物理学者・数学者。1700年オランダのフローニンゲンで生まれる。ベルヌーイ家は音楽のバッハ家と同様、天才を多く輩出した家系として知られ、父のヨハンや伯父のヤコプは、いずれも高い業績を残した数学者。
ダニエル・ベルヌーイはロシアのペテルブルグ科学アカデミーやバーゼル大学で教鞭をとった。業績としては、後に航空機の飛ぶ原理ともなる「ベルヌーイの定理」や気体分子運動論の研究などがある。
ダニエル・ベルヌーイ |
[ダニエル・ベルヌーイ 人物情報]
Wikipediaの人物情報
ダニエル・ベルヌーイ(Daniel Bernoulli, 1700年2月9日 - 1782年3月17日)はスイスの数学者・物理学者。
生涯
オランダのフローニンゲンに、数学者ヨハン・ベルヌーイの息子として生まれる。伯父としてやはり数学者のヤコブ・ベルヌーイがいる。ダニエルはベルヌーイ家の中では最も才能があり有望であった。そのためか彼と父との関係には緊張が絶えず、パリ大学の科学アカデミーのコンテストでは、ヨハンは自分の息子と比較されることに耐えられず、ダニエルに論文提出を禁止したという。ヨハンは、ダニエルの主著 Hidrodynamica を盗用し、Hidraulica と名を変えて発表しようとした。ダニエルの関係改善の努力もむなしく、父は死ぬまで息子を逆恨みしていた。1725年にはペテルブルク科学アカデミーに数学教授として就任するが、1733年に病気を口実に辞し後任として友人のレオンハルト・オイラーを推薦している。同じ年バーゼル大学の植物学・物理学教授となり、その死まで医学・形而上学・自然哲学を教えた。
業績
初期の数学上の業績は、ヤコポ・リカッチによって提出された微分方程式の解決法をふくんだ Exercitationes (英語:Mathematical Exercises, 1724年)であった。
1738年に出版された最も重要な著書は、Hydrodynamica (『水力学』)である。すべての結果が一つの原則(この場合はエネルギー保存の法則)に結びついていくところなどは、ジョゼフ=ルイ・ラグランジュの Mechanique Analytique (『解析力学』)に似ている。「空気や水の流れがはやくなると、そのはやくなった部分は圧力が低くなる。はやく流れるほど圧力は下がる。」というベルヌーイの定理は、流線や渦線に沿ってベルヌーイ関数が保存されるという形に友人のオイラーが洗練して今日の流体力学の基礎を築いた。
潮汐に関する彼の論文は、レオンハルト・オイラーとコリン・マクローリンとによる論文と合同でアカデミー・フランセーズに表彰された。3人の論文は、アイザック・ニュートンの『プリンキピア』出版とピエール=シモン・ラプラスの業績までの間に、この主題について論議されたすべての問題を含んでいる。
また、ベルヌーイは弦の振動に関して微分方程式の解を三角関数で展開する方法で、振動弦の式を求めた。彼は気体運動論の先駆者であり、ロバート・ボイルとエドム・マリオットの名がついた法則を解釈した。反動によって船舶を推進させる着想もある。
リスクの測定に関する新しい理論
自然科学の分野以外で特記すべきは、経済理論へのベルヌーイの先駆的な貢献である。1738年に、「リスクの測定に関する新しい理論」というラテン語で書かれた論文が、学術雑誌『ペテルブルク帝国アカデミー論集』に掲載された。- 歪みのないコインを表が出るまで投げ続ける、というゲームを想定する。表が初めて出るときが第1回目なら2ルーブリ、第2回目ならば4ルーブリ、第3回目ならば8ルーブリ…というふうに賞金は幾何級数的に増大する、と仮定せよ。ただし、ゲーム参加料は100万ルーブリである。果たしてこのゲームに参加することで、利益を得られると期待できるだろうか。ここで、通常の感覚ならば、ゲームには参加しないだろう。しかし、利得の期待値は無限大となり、参加料の100万ルーブリを上回る。したがって「ゲームに参加すべし」という結論が出てしまう。これをサンクトペテルブルクのパラドックスと呼ぶ。
- ベルヌーイはこのパラドックスを、「ごくわずかな富の増加から得られる満足度(効用)はそれまで保有していた財の数量に反比例する」という、現在では〈限界効用逓減の法則〉と呼ばれる論理で解決した。その発想は、同じ1ルーブリ獲得といっても、所得がゼロの状態からの獲得と、所得10ルーブリからのそれでは、その効用(価値)は同じではない、という点から始まる。上述のコイン投げゲームにおいて、人が「利益」として勘定に入れるべきなのは、各賞金額の期待値を総計することではなくて、各賞金額から得られる「効用」の期待値を総計することである。すると、もし限界効用の低下が著しい場合には、ゲーム参加の期待効用の総量が有限値となり、参加料から獲得可能な効用量を下回るだろう。
かかった費用ではなく限界効用に重きをおくこの考え方は、100年以上たってウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズによってベルヌーイとは別に確立された。期待効用理論が完全に復権するのは、200年後に出版された数学者ジョン・フォン・ノイマンと経済学者オスカー・モルゲンシュテルンの大著『ゲーム理論と経済行動』(1944年)においてである。
関連項目
- ベルヌーイの定理
- サンクトペテルブルクのパラドックス
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