Bierce, Ambrose Gwinnett

アンブローズ・ビアス

ビアス
Bierce, Ambrose Gwinnett
1842年06月24日~1914年
[アメリカ] [作家]

[アンブローズ・ビアス 人物情報]

アメリカの作家・ジャーナリスト。1842年オハイオ州メグズ郡の貧しい家庭に生まれる。
南北戦争に北軍の志願兵として出征。戦後、サンフランシスコで「ニューズ・レター」紙などに評論などを投稿。皮肉に富み、死と恐怖の陰を感じさせる作風で「ビター(辛辣な)・ビアス」の異名をとった。
1913年にメキシコ革命で混乱中のメキシコにわたり、行方不明となった。
代表作は『悪魔の辞典』など。
ビアスは日本には芥川龍之介によってはじめて紹介された。

Wikipediaの人物情報

アンブローズ・ギンネット・ビアスAmbrose Gwinnett Bierce, 1842年6月24日 - 1913年12月26日以降)は、アメリカ合衆国オハイオ州生まれの作家、ジャーナリスト、コラムニスト。『悪魔の辞典』でよく知られる。

人物

南北戦争では北軍に志願兵として従軍。戦後、サンフランシスコで夜警をしながら文筆業を開始。

1868年から『ニューズレター』紙に掲載された辛口の評論が人気となり、その毒と風刺の効いた筆致から「文筆界の解剖学者」、「ニガヨモギと酸をインク代わりにしている」、「ビター(辛辣な)・ビアス」などと呼ばれた。

1909年から1912年にかけて、『アンブローズ・ビアス全集』(全12巻)を自ら編集した。

1913年、メキシコ革命による混乱でほぼ内戦状態のメキシコに赴き、消息不明となる。

日本には芥川龍之介が初めて紹介。芥川は「短編小説を組み立てさせれば、彼程鋭い技巧家は少い。評家がエドガー・アラン・ポーの再来と云ふのは、確にこの点でも当たつてゐる」と評価している。また芥川の作品のうち『藪の中』『侏儒の言葉』などにビアスの影響が指摘されている。

また、日本での研究者・翻訳者としては奥田俊介が著名である。

生い立ちと軍歴

オハイオ州南東に位置するメグズ郡 (オハイオ州)ホース・ケイヴ・クリークという僻村に生まれる。思春期をインディアナ州エルクハートの町で過ごした。南北戦争が勃発すると、ビアスはインディアナ義勇軍第9連隊に入隊、北軍に参加した。1862年2月、ウィリアム・バブコック・ヘイズン少将の幕僚として中尉に任官、測量技官として戦場想定地の地図の作成に当たった。この戦争における重要な戦いではしばしば勇敢に戦い、中でもウェストバージニア州ジラード・ヒルでの戦闘において重傷を負った戦友を砲火の下から救出し、新聞にも紹介されている。1864年6月、ケネソー・マウンテンの戦いにおいて頭に重傷を負い、夏の終わりまで療養生活を送ったが、9月には軍務に復帰、やがて1865年1月に除隊となった。

しかし1866年夏に復員、西部の平野を横断する前哨地視察を目的とするヘイズン少将の調査旅行に参加。馬や馬車を使ったこの旅はオマハからネブラスカ州を経由し、年末にはサンフランシスコに到着した。

ジャーナリズム

サンフランシスコで軍から除隊、名誉少佐の辞令を受ける。この地に何年もとどまって『サンフランシスコ・ニューズレター』『アルゴノート』『ワスプ』などの地方紙の寄稿者・編集者として活動し、名の知れた存在になっていく。1872年から1875年にかけてはイギリスで活動した。その後アメリカに戻ると、ふたたびサンフランシスコに居を構える。1879年から1880年にかけて、ニューヨークの鉱業会社の現地支配人として当時ダコタ準州であったサウスダコタ州のロックビルやデッドウッド (サウスダコタ州)に赴いたが、会社の経営が行き詰るとサンフランシスコにもどってジャーナリスト活動に復帰した。1887年、ウィリアム・ランドルフ・ハーストが経営に着手した新聞『サンフランシスコ・エグザミナー』の初期の連載コラムニストの一人となり、やがて、アメリカ西海岸でもっとも強い影響力をもつライターに数えられるようになった。1899年12月にはワシントンD.C.に転居したが、ハースト系の新聞への寄稿は1906年まで続けられた。

マッキンリー訴訟

ビアスは世間に対する容赦のない毒舌や風刺を強く好んだため、執筆者としてのその長いキャリアにおいて、論争を生じさせることがしばしばあった。実際の事件を扱ったコラムの中には非難の嵐を巻き起こしてハーストの立場を危うくしたものもある。そのうち、もっとも有名なものの一つを挙げると、1900年にビアスが書いた風刺詩が1901年にマッキンリー大統領暗殺事件が発生した後、ハーストの政敵たちによって問題とされ、世間の注目を集めた事件がある。ビアスがこの風刺詩で意図したのは、ケンタッキー州知事への就任を控えていたウィリアム・ゴーベルが暗殺された事件について国民が戦慄していることを表現することだったのだが、翌年マッキンリーが暗殺されたため、次に挙げる部分がまるでこの事件を予言したもののように読むこともできたのである。

このためにハーストは、対立関係にあった新聞社――それに当時のアメリカ合衆国国務長官エリフ・ルート――によって、マッキンリーの暗殺を未然に知っていたものとして(おそらくわざと)告発された。沸騰する世論の中で、ハーストは大統領職への野心もかなわぬものとなり、その上ボヘミアン・クラブの会員資格をも失ったが、問題の風刺詩の作者がビアスであることを明かすこともなければ、ビアスを解雇することもしなかった。

著作活動

その短編小説は19世紀最高の部類に入ると考えられている。みずからの戦争体験において見聞きした凄惨な出来事を『アウル・クリーク橋の一事件』『レサカにて戦死』『チカモーガ』などでリアルに描き出した。

ビアスは同時代人から「純粋な」英語の達人と見られていたため、かれのペンから生まれたもののほとんどすべてが、語法や文体の上で注目に値するものと捉えられた。さまざまなジャンルの作品をたくみに書いており、すぐれた幽霊小説・戦争小説に加え、詩集も出版している。また『悪魔の寓話』は20世紀に一つのジャンルとなったグロテスク・アイロニーの先駆けを成した。

もっとも有名な作品として、非常によく引用される『悪魔の辞典』がある。そもそもは新聞紙上で連載されたものが、まず1906年に『冷笑派用語集』として出版された。隠語や玉虫色の表現に痛烈な風刺を加え、言葉に興味深い再解釈を施している。

1909年に出版された全12巻の全集においては、『冷笑派用語集』をビアスみずから『悪魔の辞典』に改題、第7巻のすべてを使用して収録している。

失踪

1913年10月、すでに70代になっていたビアスは、ワシントンD.C.を去り、彼が関わった南北戦争の旧戦場をめぐる旅に出た。12月までの間にルイジアナ州、テキサス州を通過。エル・パソを通って、当時メキシコ革命のために混乱状態にあったメキシコに入国した。シウダー・フアレスでパンチョ・ビリャ軍にオブザーバーとして加入し、ティエラ・ビアンカの戦いに参加している。チワワ州チワワ (チワワ州)に到着するまではビリャ軍と行動をともにしていたことは判明している。この都市から1913年12月26日に親しい友人へ手紙を送ったのを最後に完全に消息を絶っており、アメリカ文学史上もっとも有名な失踪事件のひとつとなった。

ビアスのその後の運命を調査する試みはまったく成果をあげられず、百年近くが経過した今となっても、その真相は謎とされたままである。怪物が棲むといわれる横穴などの一切無い行き止まりの洞窟に入って、二度と出て来ずそのまま行方不明になった、という怪談じみた話も広く伝わっている。

関連事項

  • ロバート・W・チェンバースは、短編集『黄衣の王』の中で、ビアス作品からいくつかの用語や架空の地名を借用している(たとえば、ハスターやカルコサなど)。のちに、ホラー小説家のハワード・フィリップス・ラヴクラフトがこれらを自分の小説に取り込んだため、さらにのちの作家たちによって体系化されたラブクラフトの世界『クトゥルフ神話』にも登場している。
  • メキシコの小説家カルロス・フエンテスはビアスの失踪後を扱ったフィクション小説『老いぼれグリンゴ』を著した。ビアスの性格をうまく使い、当時のメキシコ社会の混乱と米国との関係を説得力をもって展開したこの小説は、1989年にルイス・プエンソ監督、グレゴリー・ペック主演で " OLD GRINGO "(邦題『私が愛したグリンゴ』)として映画化された。
  • アメリカのSF小説家ロバート・A・ハインラインの小説『失われた遺産』に登場人物の一人としてビアスが登場する。この小説でのビアスは、脳の本来使われていない部分の使い方を会得することで超能力を得た人々の仲間である。
  • イギリス出身の小説家ジェラルド・カーシュの短篇『壜の中の手記』では、ビアスが失踪前に書いた手記が発見される。手記のなかでビアスは、「旧き種族」と名乗る人々との遭遇を書いている。カーシュは、この作品でエドガー賞を受賞した。
  • 丹羽昌一のミステリ小説『天皇(エンペラドール)の密使』に、革命中のメキシコに邦人保護の使命を帯びて派遣される主人公の日本人官吏と絡む重要人物としてビリャ軍時代のビアスが登場する。本作におけるビアスは、上記の小説群とはやや趣を異にし、歴史考証を行った上でビアスの失踪前の動きにほぼ近い形で描かれている。なお本作は1995年の第12回サントリーミステリー大賞大賞・読者賞を受賞し、同年、筒井道隆主演でテレビドラマ化された。
  • 映画『フロム・ダスク・ティル・ドーン3』にも、失踪したはずのビアスが登場している。
  • 『大長編ドラえもん』10作目「ドラえもん のび太の日本誕生」では、「行き止まりの洞窟に入り、二度と出てこなかった」と紹介されている。同じく藤子・F・不二雄の漫画作品である『キテレツ大百科』にも同様の紹介があり、「四次元の世界へ迷い込んだのではないか」と推測されている。また、『T・Pぼん』にもビアスが登場している。そこでは、洞穴に入ったビアスは時空の渦に巻き込まれて遠未来へ時間移動したことになっている(タイム・パトロールに保護されたが、未来世界への興味が尽きず、元の時代に戻らず留まった)。
  • 環望の吸血鬼漫画『ダンスインザヴァンパイアバンド』に、ある場所を守る門番として登場する。
  • 平野耕太の漫画『ドリフターズ (漫画)』では「漂流物(現実世界で古今東西生死不明のまま未帰還となった人物)」の候補として、第1巻のカバー裏に登場。作者の平野いわく「宇宙一イヤミなおっさん」。

作品リスト

短編集

  • 『生のさなかにも』 In the Midst of Life
  • 『豹の眼』 Tales of Soldiers and Civilians
  • 『死の診断』 A Diagnosis of Death
  • 『修道士と絞刑人の娘』 The Monk and the Hangman's Daughter
  • 『悪魔の寓話』 Fantastic Fables/Epigrams
  • 『完訳・ビアス怪異譚』
    • 「羊飼いのハイータ」 Haita the Shepherd
    • 「カルコサの住民」 An Inhabitant of Carcosa
  • 『ビアス怪談集』
  • 『対訳ビアス』
  • 『ビアス選集』
    1. 戦争
    2. 人生
    3. 幽霊 1
    4. 幽霊 2
    5. 殺人
  • 『つかのまの悪夢』
  • 『よみがえる悪夢』

その他

  • 『悪魔の辞典』 The Devil's Dictionary

外部リンク


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