ドイツの哲学者。1874年ブレスラウでユダヤ人の富裕な商人の家に生まれる。
ベルリン大、ライプツィヒ大、ハイデルベルク大を経てマールブルク大学でコーエンに師事する。新カント派のマールブルク学派の中心的人物として、近代哲学と科学史における認識の問題を研究。やがて独自の「象徴形式の哲学」を体系づけた。認識は具体的な「形式」の分析を世界・宇宙の諸形式の特性を把握することであると主張した。
1929年にハイデガーとダヴォス討論を行う。1941年、第2次大戦のためアメリカに亡命。イェール大、コロンビア大で教鞭をとった。1945年ニューヨークで死去。
主著は『認識の諸問題』『象徴形式の哲学』『国歌の神話』など。
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エルンスト・カッシーラーカッシーラー (別名:カッシラー) |
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[エルンスト・カッシーラー 人物情報]
Wikipediaの人物情報
エルンスト・カッシーラー(Ernst Cassirer, 1874年7月28日 - 1945年4月13日)は、ユダヤ系のドイツの哲学者、思想史家。
新カント派に属し、“知識の現象学”を基礎にしながら、シンボル=象徴体系としての文化に関する壮大な哲学を展開した。
生涯
シレジアのブレスラウ(現在のポーランド領ヴロツワフ)でユダヤ系の家庭に生まれる。フンボルト大学ベルリンで文学と哲学を学ぶ。フィリップ大学マールブルクでヘルマン・コーエンやパウル・ナトルプに学び、新カント派のマールブルク学派の中心的な存在のひとりとなる。
ベルリン大学の私講師(Privatdozent)を経て1919年に新設されたハンブルク大学の教授。1933年に亡命するまで勤める。学生にレオ・シュトラウスがおり、博士論文の指導をする。他ハンス・ライヘンバッハも生徒の一人だった。
1929年にマルティン・ハイデッガーとのダヴォス討論を行なう。一般的にはこの世紀の対決はハイデガーの勝利だと言われている。
国家社会主義ドイツ労働者党政権樹立とともに、イギリスに移りオックスフォード大学講師(〜1935年)となる。イギリス時代には、アビ・ヴァールブルクの収集した資料を基礎に設立されたヴァールブルク研究所(ウォーバーグ研究所)の初代所長フリッツ・ザクスルらと交流した。のちスウェーデンのヨーテボリ大学教授(〜1941年)となるが、ナチスの勢力が拡大するにつれてアメリカ合衆国へ移る。はじめハーヴァード大学に受け入れてもらう予定だったが、30年前のベルリン時代にハーヴァードからの招聘を断っていたため、断られる。イェール大学(〜1943年)で教えたのちニューヨークのコロンビア大学に移る。スウェーデンに帰化していたためドイツ・ユダヤ系スウェーデン市民としてニューヨークで没す。
業績
マールブルク学派時代
マールブルク学派時代に執筆された『認識問題』では中世思想から近代思想を認識論の問題を中心に論じ、『実体概念と関数概念』では近代的な科学の認識論的な転回として、実際に見ることの出来る、実体概念から、関数的な記述によってのみ捉えられる、関数概念への移行を分析した。これらの哲学史・思想史的な著作によって、マールブルク学派とは一線を画すようになる。
シンボル形式の理論
イギリス時代にヴァールブルク研究所のザクスルらと交流したことで、シンボル研究をはじめ、その時代の研究の集大成『シンボル形式の哲学』全四巻を表した。またその一般的な概観書である『人間』において、人文科学、社会科学を横断して独自の哲学的人間学を構築した。カッシーラーは“シンボリック・アニマル(象徴を操る動物)”として人間をとらえ、動物が本能や直接的な感覚認識や知覚によって世界を受け取るのに対して人間は意味を持つシンボル体系を作り、世界に関わっていく。シンボル体系は、リアリティ(実在性)の知覚を構造づけまた形を与え、またそれゆえ、例えば世界に実在しないユートピアを構想することもできるし、共有された文化形式を変えて行くことができる、とした。こうした理論の基盤には、カントの超越論的観念論がある。カントは現実の世界(actual world)を人間は完全に認識することはできないが、人間が世界や現実を認識するその仕方(形式)を変えることはできるとした。カッシーラーは人間の世界を、思考のシンボル形式によって構築されていると考えた。ここでいう思考には、言語、学問、科学、芸術における思考のみならず、一般の社会におけるコミュニケーションや個人的な考えや発見、表現などを含めた意味あいがある。
国家の神話
1946年に、没後出版された『国家の神話』では、ナチスなどの全体主義的国家理論を批判的に考察し、プラトン、ダンテ、マキャヴェッリ、ゴビノー、トーマス・カーライル、シェリング、ヘーゲルらの国家理論を検討した。カッシーラーは、20世紀の全体主義体制を運命の神話と非合理主義によってシンボル化されたものとした。『国家の神話』第一部「神話とは何か」では神話的思考が概観される。第二部「政治学説における神話にたいする闘争」では、「合理的な国家理論はギリシャ哲学に始まった」とし、歴史を記述するにあたり“伝説的なもの(ファビュラスなもの)”を排除しようとしたトゥキディデスを「神話的歴史観に対して初めて攻撃を加えた」とする。古代ギリシアにおける合理的国家論の前提になるのは、自然観(自然の研究)であり、ミレトス学派(タレス、アナクシマンドロス、アナクシメネス)にはなお神話的思考が認められるものの、「起源」(アルケー)の定義において新しい合理的思考が展開される契機となったとしている。
補遺
他にも、ルネサンス研究、科学論等の業績がある。
影響
カッシーラーの思想は新カント派の射程に収まらないものを持ち、ドイツの哲学者ハンス・ブルーメンベルクにも影響を与えている。またカッシーラーのシンボル哲学は、アメリカでスザンヌ・ランガーやネルソン・グッドマンによって発展され、文化人類学者のクリフォード・ギアツ、ケネス・バークなどにも影響を与えた。『実体概念と関数概念』における関数=機能概念の分析は社会学において構造機能主義を提唱したタルコット・パーソンズやニクラス・ルーマンらにも影響を与えた。
著作
- 221Leibniz' System in seinen wissenschaftlichen Grundlagen.222 (1902)
- 223Der kritische Idealismus und die Philosophie des "gesunden Menschenverstandes224, Gieszen: Töpelmann (1906)
- Kant und die moderne Mathematik. In: Kant-Studien. Band 12 (1907), S. 1–40
- Das Erkenntnisproblem in der Philosophie und Wissenschaft der neueren Zeit (1906-1920,1950)
- 『認識問題──近代の哲学と科学における』 みすず書房全4巻
- 第1巻.須田朗・宮武昭・村岡晋一訳/第2巻(2分冊).村岡晋一ほか訳第3巻未刊行/第4巻.山本義隆・村岡晋一共訳
- (Band 1: 1906; Band 2: 1907; Band 3: Die nachkantischen Systeme, 1920; Band 4: Von Hegels Tod bis zur Gegenwart. (1832–1932), 1957)
- 235Substanzbegriff und Funktionsbegriff. Untersuchungen über die Grundfragen der Erkenntniskritik.236 (1910)
- 『実体概念と関数概念──認識批判の基本的諸問題の研究』 山本義隆訳 みすず書房
- 237Freiheit und Form. Studien zur deutschen Geistesgeschichte.238 (1916)
- 『自由と形式―─ドイツ精神史研究』 中埜肇訳、ミネルヴァ書房
- 239Kants Leben und Lehre.240(1918)
- 『カントの生涯と学説』 門脇卓爾監修、みすず書房
- Zur Einsteinschen Relativitätstheorie. Erkenntnistheoretische Betrachtungen(1920)
- 『アルベルト・アインシュタインの相対性理論』:山本義隆訳、河出書房新社
- Idee und Gestalt. Goethe, Schiller, Hölderlin, Kleist. (1921)
- 『理念と形姿 ゲーテ・シラー・ヘルダーリン・クライスト』 中村啓ほか訳、三修社
- Philosophie der symbolischen Formen(1923-1929)
- 『シンボル形式の哲学』 生松敬三・木田元訳、岩波文庫全4巻
- Individuum und Kosmos in der Philosophie der Renaissance (1927)
- 『個と宇宙──ルネサンス精神史』 薗田坦訳、名古屋大学出版会
- 『ルネサンス哲学における──個と宇宙』 末吉孝州訳、太陽出版
- Die Idee der republikanischen Verfassung. (Universitätsrede) ,1929
- Kant und das Problem der Metaphysik. Bemerkungen zu Martin Heideggers Kantinterpretation. In: Kant-Studien. Band 36, 1931, S. 1–16
- Erkenntnistheorie nebst den Grenzfragen der Logik und Denkpsychologie. In: Jahrbücher der Philosophie. Band 3, 1927, S. 31–92
- Die Philosophie der Aufklärung(1932)
- 『啓蒙主義の哲学』 中野好之訳、紀伊国屋書店/改訂版 ちくま学芸文庫上下
- Determinismus und Indeterminismus in der modernen Physik., 1937
- Axel Hägerström: Eine Studie zur Schwedischen Philosophie der Gegenwart., 1939
- Zur Logik der Kulturwissenschaften.:Naturalistische und humanistische Begründung der Kulturphilosophie, 1942
- 『人文科学の論理 五つの試論』 中村正雄訳 創文社 1976年
- An Essay on Man, 1944
- 『人間――シンボルを操るもの』 宮城音弥訳 岩波書店、新版岩波文庫
- The myth of the state, 1946
- 『国家の神話』 宮田光雄訳 創文社 初版1960年
- 『国家 その神話』 河原宏ほか訳 理想社 1957年
- ※原著の刊行時期は不明だが、大半は没後刊行。
- Philosophie und exakte Wissenschaft
- 『哲学と精密科学』 大庭健訳 紀伊国屋書店 新版2003年
- Descartes, Lehre-Persönlichkeit-Wirkung -下記は抄訳版
- 『デカルト、コルネーユ、スウェーデン女王クリスティーナ (スウェーデン女王) 一七世紀の英雄的精神と至高善の探求』 朝倉剛・羽賀賢二訳 工作舎、2000年 ISBN 978-4-87502-333-3
- Symbol, Technik, Sprache (Hamburg Felix Meiner)
- 『シンボル・技術・言語』 高野敏行ほか訳、叢書ウニベルシタス・法政大学出版局 1999年
- Symbolum et scientia scientia naturalis et philosophia in Europa moderna
- 『シンボルとスキエンティア 近代ヨーロッパの科学と哲学』 ありな書房 1995年 この日本語版は伊藤博明によって独自に編集され、根占献一によるオリジナルな序論としてカッシーラー論が含まれている。
- The Platonic renaissance in England
- 『英国のプラトン・ルネサンス ケンブリッジ学派の思想潮流』 工作舎 1993年 ISBN 4-87502-223-9
- Symbol, myth, and culture : essays and lectures of Ernst Cassirer
- 『象徴・神話・文化』 D.P.ヴィリーン編、神野慧一郎訳 ミネルヴァ書房 1985年
- Zehen Schriften uber Goethe
- 『カッシーラー ゲーテ論集』 森淑仁編訳 知泉書館 2006年-全10編を集大成。
- Zur Metaphysik symbolischen Formen
- 『象徴形式の形而上学 エルンスト・カッシーラ遺稿集 第一巻』 森淑仁監訳、笠原賢介訳、叢書ウニベルシタス・法政大学出版局、2010年-刊行巻数未定
- ※小著の訳書、(ほぼ品切)
- Rousseau, Kant, Goethe : two essays
- 『十八世紀の精神 ルソーとカントそしてゲーテ』 原好男訳 思索社
- Sprache und Mythos
- 『言語と神話』 岡三郎、 岡富美子共訳 国文社 1972年
- Das Problem Jean-Jacques Rousseau
- 『ジャン=ジャック・ルソー問題』 生松敬三訳 みすず書房/ 新版.みすずライブラリー
- Goethe und die geschichtliche Welt
- 『ゲーテと十八世紀』 友田孝興・栗花落和彦共訳
- 『ゲーテとプラトン』 同、文栄堂書店、1990-91年
脚注
外部リンク
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- 参考サイト 唐草図鑑エルンスト・カッシーラー(Ernst Cassirer, 1874 - 1945) · エルヴィン・パノフスキー(Erwin Panofsky, 1892 - 1968) · マリオ・プラーツ(Mario Praz、1896-1982) · フランセス・イエイツ(Frances Amelia Yates、1899 - 1981、女性) ...
- 2012-01-24 - 福岡北九州古本出張買い取り JR小倉駅北口 古書城田自由と形式 ドイツ精神史研究,◆状態:普通 カバー薄ヤケ ◆317+4頁,2000,A5 重刷 カバー付 ミネルヴァ書房,1983,エルンスト・カッシーラー:著 中埜肇:訳 ミネルヴァ書房. 死,◆状態:普通 カバー&小口薄ヤケ ◆514頁,3500,A5 重刷 ...
- 2012年01月13日のツイート - たけみたの脱社会学日記エルンスト・カッシーラー『シンボルとスキエンティア』 URL 55頁. 2012-01-13 18:53:43 via HootSuite. @takemita: クレメンス・ルーマン(47歳)の奥さんはニカラグア出身のジェニー(30歳)とのこと。なかなかの歳の差婚である。息子は ...
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