西行

サイギョウ (別名:佐藤 義清)
Saigyo
1118年~1190年03月23日
[日本] [詩歌]

[西行 人物情報]

院政期から鎌倉時代初期にかけて活躍した歌人。鳥羽院の北面の武士として奉仕していた記録が残っていますが、23歳で出家して円位を名のり、後に西行と称しました。勅撰集では詞花集に1首、千載集に18首、新古今集に94首を初めとして、二十一代集に計265首が入撰。家集に「山家集」「山家心中集」「聞書集」、その逸話や伝説を集めた説話集に「撰集抄」「西行物語」があり、歌と仏道の双方を歩み、率直質実を旨としながら強い情感をてらうことなく表現する歌風は、新古今の新風形成に大きな影響を与えた歌人です。

Wikipediaの人物情報

画/江戸時代)西行(さいぎょう)、元永元年(1118年) - 文治6年2月16日 (旧暦)(1190年3月23日)は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけての武士・僧侶・歌人。 父は左衛門尉佐藤康清、母は監物源清経女。同母兄弟に佐藤仲清があり、子に隆聖、女子(西行の娘)がある。俗名は佐藤 義清(さとう のりきよ)。憲清、則清、範清とも記される。出家して法号は円位、のちに西行、大本房、大宝房、大法房とも称す。

勅撰和歌集では『詞花和歌集』に初出(一首)。『千載和歌集』に十八首、『新古今和歌集』に九十四首(入撰数第一位)をはじめとして二十一代集に計265首が入撰。家集に『山家集』(六家集の一)『山家心中集』(自撰)『聞書集』、その逸話や伝説を集めた説話集に『撰集抄』『西行物語』があり、『撰集抄』については作者に擬せられている。

生涯

秀郷流武家藤原氏の出自で、藤原秀郷の9代目の子孫。佐藤氏は義清の曽祖父佐藤公清の代より称し、家系は代々衛府に仕え、また紀伊国田仲荘の預所に補任されて裕福であった。16歳ごろから徳大寺家に仕え、この縁で後にもと主家の徳大寺実能や徳大寺公能と親交を結ぶこととなる。保延元年(1135年)18歳で左兵衛尉(兵衛府の四等官#日本の四等官制)に任ぜられ、同3年(1137年)鳥羽天皇の北面武士としても奉仕していたことが記録に残る。和歌と有職故実に通じた人物として知られていたが、同6年(1140年)23歳で出家して円位を名のり、後に西行とも称した。

その動機には、友人の急死にあって無常を感じたという説が主流だが、失恋説もあり、これは『源平盛衰記』に、高貴な上臈女房と逢瀬をもったが「あこぎ」の歌を詠みかけられて失恋したとある。近世初期成立の室町時代物語「西行の物かたり」(高山市歓喜寺蔵)には、御簾の間から垣間見えた女院の姿に恋をして苦悩から死にそうになり、女院が情けをかけて一度だけ逢ったが、「あこぎ」と言われて出家したとある。この女院は、西行出家の時期以前のこととすれば、白河天皇の愛妾にして鳥羽院の中宮であった藤原璋子であると考えられる。

しかしこれは後代の創作であるが、1988年『西行』で白洲正子が、待賢門院への失恋による出家説を唱え、90年、瀬戸内寂聴が連載を開始した『白道』で続き、91年に辻邦生が連載を始めた『西行花伝』で踏襲したもので、2008年三田誠広も書いている。また同書で瀬戸内は、美福門院説もあるとしているが、典拠不明である。五味文彦『院政期社会の研究』(1984)では恋の相手を上西門院に擬しているが、根拠薄弱である。

他にも、西行の生涯を知る上で重要な書物の1つである「西行物語絵巻」(作者不明、二巻現存。徳川美術館収蔵。うち、一巻は、蜂須賀家に伝来し、2004年に閉館した萬野美術館に所蔵されていた。)では親しい友の死を理由に北面を辞したと記されている。

出家後は心のおもむくまま諸所に草庵をいとなみしばしば諸国をめぐり漂泊の旅に出て多くの和歌を残した。讃岐国に旧主崇徳天皇の陵墓白峰を訪ねてその霊を慰めたと伝えらえ、これは後代上田秋成によって『雨月物語』中の一篇「白峰」に仕立てられている。なお、この旅では弘法大師の遺跡巡礼も兼ねていたようである。また特に晩年東大寺再建の勧進を奥州藤原氏に行うために陸奥に下った旅は有名で、この途次に鎌倉で源頼朝に面会したことが『吾妻鏡』に記されている。

年次に従って言えば、出家直後は鞍馬山などの京都北麓に隠棲し、天養初年(1144年)ごろ奥羽地方へはじめての旅行。久安4年(1149年)前後に高野山(和歌山県高野町)に入り、仁安 (日本)3年(1168年)に中四国への旅を行った。このとき善通寺(香川県善通寺市)でしばらく庵を結んだらしい。後高野山に戻るが、治承元年(1177年)に伊勢二見浦に移った。文治2年(1186年)に東大寺勧進のため二度目の奥州下りを行い、伊勢に数年住ったあと河内弘川寺(大阪府河南町)に庵居。建久元年(1190年)にこの地で入寂した。かつて「願はくは花の下にて春死なん、そのきさらぎの望月のころ」と詠んだ願いに違わなかったとして、その生きざまが藤原定家や僧慈円の感動と共感を呼び当時名声を博した。

西行の弟子とされた西住(さいじゅう)は晩年現在の山深い八日市町には「都もどり地蔵」の石碑があり、この地で西行と別れたとの伝承がある。西住の地の墓には建久4年3月建立と刻まれ、並ぶ別の墓は1954年(昭和29年)3月建立、「西住霊碑」「西住法師の元俗名は、源次郎兵衛なり...西行が西住を従え北国行脚の際、文治4年8月遂に寂す。是よりこの地を西住と称す。...」と刻まれる。

旅路において

  • 各地に「西行戻し」と呼ばれる逸話が伝えられている。共通して、現地の童子にやりこめられ恥ずかしくなって来た道を戻っていく、というものである。
    • 松島「西行戻しの松」
    • 秩父「西行戻り橋」
    • 日光「西行戻り石」
    • 紀州宇久井村(現在の和歌山県東牟婁郡那智勝浦町宇久井村)での詩
 「目覚山下す有らしのはげしくて 高根の松は寝入らざりけり」
  • 高野山にて修行中、人恋しさの余り人骨を集めて秘術により人間を作ろうとしたが、心の通わぬ化け物が出来上がったため恐ろしくなり、人の通わぬ所にうち棄てて逃げ帰ったという逸話がある。このように、西行の逸話にはその未熟さを伺わせるものが多く存在する。

源頼朝との出会い

  • 頼朝に弓馬の道のことを尋ねられて一切忘れはてたととぼけたといわれている。
  • 頼朝から拝領した純銀の猫を通りすがりの子供に与えたとされている。

晩年の歌

  • 西行は、以下の歌を生前に詠み、その歌のとおり、陰暦2月16日、釈迦涅槃の日に入寂したといわれている。享年73。
ねかはくは 花のしたにて 春しなん そのきさらきの もちつきのころ (山家集)
ねかはくは はなのもとにて 春しなん そのきさらきの 望月の比 (続古今和歌集)
*花の下を"した"と読むか"もと"と読むかは出典により異なる。なお、この場合の花とはサクラのことである
*なお、国文学研究資料館 電子資料館において続古今和歌集の原典を実際に画像で閲覧できる。詳しくはそちらを参照。

関連著作

  • 『山家集 新潮日本古典集成』 後藤重郎校注、新潮社
  • 『新訂 山家集』 佐佐木信綱校訂 岩波文庫 同ワイド版
  • 『山家集』 風巻景次郎校注 日本古典文学大系29、岩波書店
  • 『山家集』 伊藤嘉夫校註 日本古典全集・第一書房 1987
  • 『西行法師全歌集』 伊藤嘉夫編  第一書房 1987
  • 『西行全集』 久保田淳編 日本古典文学会、貴重本刊行会、1990
  • 『新訂増補 西行全集』 尾山篤二郎編著、五月書房、1978
  • 『西行全集』全2巻 伊藤嘉夫、久曾神昇編、ひたく書房、1981
  • 『西行物語』 桑原博史訳注、講談社学術文庫  1981
  • 『西行物語絵巻』 小松茂美編 〈日本の絵巻19〉 中央公論社 
  • 『新訳 西行物語』 宮下隆二訳 選書版:PHP研究所 2008  
  • 『絵巻=西行物語絵』 千野香織編 〈日本の美術416号〉 至文堂 2000

関連事項

  • 彼が結んだとされる西行庵は複数あるが、京都の皆如庵は明治26年(1893年)に、当時の庵主宮田小文と富岡鉄斎によって、再建されて現在も観光名所として利用されている。その他にも、吉野山にある西行庵跡が有名である。
  • 能『江口』、『西行桜』。
  • 落語『西行』、『西行鼓ヶ滝』。
  • 長唄『時雨西行』。義太夫節『軍兵富士見西行』。
  • 『雨月物語#白峯』(「雨月物語」)
  • 高杉晋作 - 『西へ行く 人を慕うて 東行く 我が心をば 神や知るらむ』と歌い、東行と号した。ここでいう西へ行く人とは、他ならぬ西行を表している。一方、西行に敬意を払う高杉自身は東にある、征夷大将軍のお膝元の江戸幕府討伐を目指した。
  • 火坂雅志 - 小説家。デビュー作『花月秘拳行』は、西行が主人公。
  • 辻邦生 - 小説家。大作『西行花伝』で、第31回谷崎潤一郎賞。

脚注

関連項目

  • 似雲
  • 歌人一覧
  • 日本の書家一覧
  • 西行の娘
  • 奥の細道#福井あわら市 吉崎 -福井あわら市吉崎

外部リンク

1118年生まれの人物
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